昨日の夜のこと。
スタジオからの帰り道。9時半過ぎてたからもう辺りは真っ暗。
いつものようにチャリをとばしていた私の前を、猫にしては大きな動物が通り過ぎた。
足取りが少しおぼつかない様子だったから、おかしいなぁ〜と思い後を追った。
柴犬だった。
首輪がついてるし、喉が乾いている様子で、下水道の脇に溜まったわずかな水をなめていたから、これは迷い犬に違いない!!と思いさらに近づいてみた。
普通だったら、すぐに逃げるか吠えるか抵抗するか、何らかのアクションをおこすはずなのに、逃げも吠えもしない。
おとなしい、可愛い柴だ。
首輪には名前も電話番号もなく、名鑑犬として、登録番号が記載されているだけ。
電話番号がないのは残念だけど、登録番号があれば、飼い主に知らせが行くだろう、と希望を持った。
が、しかし、どうやってこのコを交番まで連れていくか。
この場で、携帯で警察に電話したところで、たかが一匹の迷い犬ごときに、お巡りさんが駆けつけてくれるほど警察もヒマではないだろう。
だが、たかが一匹の犬が、飼い主ににとっては大事な大事な家族だ。
居なくなりでもしたら、どうしようもなく悲しい。
ここで、私の3年程前のミカエル失踪事件がよみがえる。
家の玄関を掃除していたら、電話が鳴り、慌てて電話に出て話し込んでいる間に、
開けっ放しだった玄関からスタコラサッサと、出て行ってしまった。
通話を終えてしばらくして、ミカエルが居ないのに気付いた。
私は、泣きじゃくりながら「みかえる〜〜〜!!!」と近所を探し回った。
仕事に行かなければいけない時間が刻々と迫り、タイムアウトとなったが、このままでは仕事に行けない。
だが、「犬が居なくなったからレッスン休みます。」などとも言えない。
しかたなく友達(犬友)に電話して後を頼んだ。
友達は、動物愛護団体、動物病院、警察と、色んな施設に電話をしてくれていた。
出勤してスタジオに(当時はスポーツクラブで教えていた)着いたところで、警察から連絡が入った。
家から一番近い交番に、商店街のお肉屋さんの奥さんが、商店街を散歩(?)しているところを見付けて届けてくれたという。 うぅぅぅぅ。。。
仕事で直ぐに迎えに行けなかった私の代わりに、警察に届けてくれたその友達が、迎えに行って、私が帰るまで預かってくれた。
その時はもう本当に生きた心地がしなかった。
そのことを思い出し、この柴くんのことを見過ごすことは出来なかった。
きっと今頃、飼い主さんは、慌てふためいているだろう。。。
辺りは真っ暗。
このまま放っておいたら交通事故にでもあってしまう。
とにかく警察に電話しよう。
104に電話して最寄の警察署の番号を聞き、かけたがつながらない。
話中。。。
何度かけても話中。。。
そんなに忙しいのか、警察ってトコは。
物騒な世の中だ。
仕方がない。
とにかく、ミカエルのリードを取りに家に帰って、交番に届けよう。
が、しかし、この子をどうやって家まで連れていこうか。
私は自転車。 リードはない。 離して付いて来るはずはないし、自転車のカゴに乗れる大きさでもナイ。 ということは、だっこ出来る大きさでもナイ。
うう〜〜〜む。。。
考えついたのは、自転車のチェーン(鍵ね)を首輪に直接巻いて、短いけどそれを施錠して持って手を下に伸ばして自転車を引いた。
なんとか家にたどりついて、ひとまずお水をあげて、ミカエルのリードを付け交番に向かった。
だがいつまで交番で預かってくれるのか。。。
もし処分でもされたらどうしよう。。。。
色んな不安が頭をよぎりながら冬の寒空を老犬と歩いていると、
向こうから自転車に乗った女性がやって来た。
「すいません、この辺で同じくらいの大きさの柴犬見かけませんでしたか?}
「え?! この子、そうじゃないですか?」
「えっ!?! たろうチャン?!?」
と、なんとも偶然、運命の再会を果たしたのである。
何でも、私が届けようと思っていた交番に、今まさに届けを出してきたところだという。
先日その方のお父様が他界して、その晩、告別式があり、式から戻ってきて晩御飯をあげようとしたら庭の柵が開いていて出て行ってしまったという。
お父さんがあの世へ連れて行ってしまったの?
と家族で探し回っていたと。
聞くところによると、たろうは16歳で、目も見えていないらしい。
だから、一度迷子になったら最後、二度とおうちには戻れない、とご家族は絶望的だったという。
その晩は、めちゃめちゃ疲れていた私だったが、”必死”な状況なときはすごいパワーが出るもので、いつの間にか疲れなんて忘れていた。
たろう、本当に良かったね。
残りの人生、いや犬生も、思いっきり可愛がってもらうんだよ。
その夜は、ミカエルをぎゅ〜〜っと抱きしめて眠りにつきました。
ミカエルは、大変迷惑そうでした、と、サ!